GROW UP

AI時代も広告はコミュニケーションというお話

/

デザイン

生成AIの普及で、広告やデザインを取り巻く環境が大きく変わっています。専門的な知識や制作経験がなくても、ぱっと見はきれいで、広告らしく見えるものを作れるようになりました。

GROW UPでも、制作にAIを活用しています。その便利さも、可能性も感じています。

ただ、その一方で気になっているのが、広告やデザインへの理解が十分でないまま、AIが出力したものを「完成した広告」として提供できてしまうことです。

少し強い言い方になりますが、発注する側には「エセ広告会社にお気をつけください」と伝えたい。

ここで私が問題にしているのは、広告の目的や届ける相手を考えず、見栄えのするものを作って納品すれば仕事が終わり、という姿勢です。

広告とは、コミュニケーションです。

この前提が抜け落ちてしまうことに、危うさを感じています。

制作の現場で補われていたもの

以前から、広告やデザインに詳しくない人が営業をして、案件を受注することはありました。

それでも、制作の工程にはデザイナーやクリエイターがいました。依頼内容が曖昧でも、クライアントの意図を読み取り、必要な情報を聞き出し、目的に合う形へ整理していく。そうした工程が、品質を支える役割を果たしていました。

もちろん、昔の広告がすべて良かったとは思いません。ただ、制作の途中で「この内容では伝わらない」「この表現は誤解される」と気づき、軌道修正できる人が関わっていたことには、大きな意味があったと思います。

今は、その工程を通らずに広告を作れてしまいます。

案件を取ってきた人が、自分で生成AIを使う。見栄えのする画像と、それらしいコピーが出てくる。そのままクライアントに見せて、了承を得て、世の中に出す。

その間に、広告として成立しているかを判断する人がいなければ、見た目だけが整った制作物が完成してしまいます。

きれいにできていても、伝わらなければ意味がない

広告で大切なのは、本当に伝えたいことが、適切な方法で、届けるべき相手に伝わっているかどうかです。

誰に向けた広告なのか。その人は何に困っていて、何を知りたいのか。商品やサービスのどの価値を伝えれば、自分に関係のある話だと感じてもらえるのか。広告に触れたあと、何を感じ、どう行動してほしいのか。

デザインは、そうした問いを具体的な表現へ落とし込む仕事です。文字の大きさや色、写真、言葉の選び方にも、それぞれ役割があります。

たとえば、介護サービスの広告。やさしそうな人物と明るい色、温かいコピーを並べれば、それらしい雰囲気にはなります。

でも、利用する本人に向けたものなのか、離れて暮らす家族に向けたものなのかで、伝えるべき内容は変わります。家族が知りたいのが「どこまで対応してもらえるか」「困ったときに相談できるか」なら、その不安に応える情報が必要です。

ぱっと見はきれい。でも、何を伝えたいのか、誰に向けているのかがわからない。

それでは、広告の大切な役割を果たせていません。

AIが褒めてくれたら、それで完成なのか

発注する側にとっても、広告やデザインの良し悪しを判断するのは簡単ではありません。そこで、制作物をAIに見せて評価してもらう。その使い方自体には、役立つ場面があると思います。

ただ、「AIがいいと言ったから大丈夫」で判断を終えてしまうのは心配です。

対話型AIは、モデルや設定、質問の仕方によって、ユーザーの意見に同調したり、肯定的な評価に寄ったりすることがあります。実際にOpenAIも、2025年にGPT-4oが過度に同調的になった問題を公表し、更新を取り消しています。[OpenAIの説明

すべてのAIが、いつも何でも褒めるという話ではありません。ただ、AIからの好評価を、そのまま広告効果の保証として扱うことはできません。

目的やターゲット、掲載する媒体、企業が大切にしていること。その前提を十分に渡さずに評価を求めても、実際に広告を見る人へ伝わるかどうかまでは確かめられないからです。

AIに作らせ、AIに褒めてもらい、完成にする。その流れの中に、お客様の視点が置き去りになっていないでしょうか。

これは、制作会社に依頼する場合だけの話ではありません。生成AIを使って広告を内製する企業にも、同じことが言えます。

安く作れた広告が、高くつくこともある

生成AIで制作費を抑えられることは、企業にとって魅力です。ただ、広告にかかる費用は制作費だけではありません。掲載費や配信費、確認や修正にかかる社内の時間もあります。

その広告が何も伝えられなければ、安く作れても、使った費用や時間を成果につなげられません。

さらに考えたいのが、マイナスの印象を与える可能性です。

不自然な表現や、内容のわかりにくさが、「この会社は大丈夫だろうか」という不信感につながることもあります。企業が意図していなくても、広告を見る人は、その制作物を通じて企業の姿勢を感じ取ります。

制作費をいくら減らせたかと同じように、その広告がどんな印象を残すかまで考える必要があります。

AIを使う時代だからこそ、考え抜く人が必要になる

生成AIを使った広告やデザインの中にも、自然に受け入れられるものと、違和感や嫌悪感を抱かれるものがあります。

受け取り方には、見る人の価値観やAIそのものへの考え方も影響するでしょう。それでも、制作する側が向き合うべき大きな違いは、どれだけ人間が深く考え、完成度を上げたかにあると私は思っています。

AIの出力を見て、目的に合っているかを判断する。伝わりにくい部分を見つけ、表現を変える。画像とコピーの関係を調整し、細部の違和感を取り除く。必要なら、方向性そのものを考え直す。

完成度とは、画像の精細さや、見た目の華やかさだけではありません。伝えたいことと表現がつながり、受け手に届く状態まで仕上がっているかということです。

この作業は、AIの操作方法を覚えれば誰でも同じようにできるものではありません。経験や知識をもとに判断を重ねる、クリエイターの専門性が問われる仕事だと考えています。

そして、それは私たち制作側にも向けられた問いです。クリエイターを名乗っていても、AIが出したものをそのまま納品するだけなら、十分な役割を果たしているとは言えません。

企業らしさと品質を保つためのデザインハーネス

こうした課題を考えるうえで、私が注目しているのが「デザインハーネス」という考え方です。

デザインの原則や必要な文脈、表現の制約、検証・評価の仕組みを整え、AIを使った制作を支えるものとして提案されています。[デザインハーネスとは何か

私はこれを、ブランディングとも近い部分を持つ考え方だと捉えています。

広告制作に引き寄せて簡単に言えば、生成AIを使っても品質がばらつきにくく、その企業らしさを表現できるよう、判断基準と制作・確認の仕組みを整えることです。

企業が大切にする価値観、届けたい相手、言葉やビジュアルの方向性、避けるべき表現。そうしたものを整理し、制作にも確認にも使えるようにしておく。それが、AIを使った継続的な発信を支えます。

デザインハーネスについては、別の記事であらためて詳しく書こうと思います。

GROW UPでは、AIを活用した制作とともに、こうした企業らしさや品質を保つための整理・設計もお手伝いしています。

私たちが大切にしているのは、「お客様のお客様へ届くデザイン」です。

AIを使って制作を効率化したい。そのうえで、伝える内容や品質にもきちんと向き合いたい。そんなときは、お気軽にご相談ください。


追記:大好きな曲が使われたCMに感じたこと

ここからは、少し個人的な話です。

最近見かけたAI関連のCMに、私の大好きなTHE BLUE HEARTSの「夢」が使われていました。正確なコピーは覚えていませんが、日本の企業を底上げする、といった趣旨のメッセージだったと記憶しています。

映像は、全編に生成AIを使っているように見えるものでした。そうした作り方自体には、特に抵抗はありません。

ただ、あのCMには、正直かなり強い嫌悪感を覚えました。

私には、カット同士のつながりが不自然に感じられ、曲のつなぎ方にも違和感がありました。映像と音楽が一つの表現としてまとまっておらず、CMの内容と「夢」という曲が、うまく結びついているようにも感じられなかったのです。

大好きな曲だからこそ、雑に扱われたように感じてしまった。なぜこの映像に、この曲を使ったのか。その必然性が、私には伝わってきませんでした。

制作者の意図や、実際にどれだけの手間をかけたかはわかりません。ただ、受け手である私には、曲の持つ力に安易に頼っているように見えてしまった。それが、とても嫌だったのだと思います。

音楽には、その曲を大切にしている人たちの記憶や感情も重なっています。広告に使うなら、その思いまで含めて、どう受け取られるかを考えてほしい。

好きな曲が流れれば、その広告まで好きになるとは限りません。使い方によっては、好きだからこそ、強い拒否感につながることもあります。

これもまた、広告がコミュニケーションであるという話につながるのだと思います。

Ad
Ad

お気軽にお問い合わせください

Contact of GROW UP

GROW UPでは、日本のみならず
海外からも幅広くご依頼承っております。
webサイトやUI/UX、パッケージなどの
デザイン制作をはじめ、
動画制作、撮影、
イラスト制作などをご検討中の方、
ご相談だけでも大歓迎です。
さらに取材対応やデザインの
セミナー講師なども対応しています。
まずはお気軽にお問い合わせください。